9条連ニュース/115号 巻頭言

丸山真男さんが語り継ぐこと
松本 昌次

すでに40年も前の1964年11月14日、いまは亡き丸山真男さんが、大内兵衛・我妻栄・宮沢俊義氏らを中心とした「憲法問題研究会」例会で行った報告「憲法九条をめぐる若干の考察」は、何度読みかえしても新鮮で、第九条を考える上でのわたしのいわば唯一欠かせぬ基本文献となっています。(この報告は、翌年 6月号の「世界」に掲載され、現在は、丸山真男著『後衛の位置から』未来社、及び『丸山真男集』第九巻・岩波書店に収録されています。)

ここで、その「報告」のいちいちには立ち入れませんが、丸山さんは、自衛隊がすでに存在することが問題ではなく、それを 漸増 させずに 漸減 し、やがて"廃絶"する方向に、政府は積極的に努力すべきことを強調しています。ところが政府は逆方向に、つまり現実追従への道をひたすら歩きつづけているのです。

そこで丸山さんは、アメリカ憲法の修正箇条第一四条・第一五条の例を引いています。それらでは、合衆国の一切の市民の平等、人種・体色による差別の禁止を宣言しているにも拘らず、依然として人種平等に反する現実が横行しています。それならば、その現実に沿って"人種不平等"を認める条項に改定すべきなの でしょうか。げんに自衛隊が存在するから、各地で戦争が絶えないから、その現実に沿って第九条を改定するというのは、逆転した考え方です。

丸山さんは、"与太話"と断って、長谷川如是閑が雑誌『我等』1929年1月号に紹介した、デンマークの陸軍大将フリッツ・ホルンが作った「戦争絶滅請合法案」について語っています。それによると、各国政府は戦争開始後 10時間以内に、次の人びとを最前線に送り実戦に従事させよというのです。すなわち、「第一に国家の元首、ただし男子にかぎる。次に元首の男子親族、次に総理大臣、各国務大臣、次に次官、それから国会議員、ただし戦争に反対投票した議員は除かれ」るというわけです。ブッシュ大統領や小泉首相にこそ聞かせたい"与太話"ですが、イラク戦争に行ったアメリカ兵士のなかに、上・下院の国会議員の子どもは、たった一人しかいないということです。

戦争はすべて「政府の政策決定」によって起こるものであり、いまだかつて人民が自発的に戦争を欲した例はない。しかし戦争の最大の被害者は人民であることはいうまでもあ りません。最大の被害者こそが「 終極的な判定権」を持つことを丸山さんは強調しつつ、「政府の権力を人民がコントロール」する憲法前文と第九条がもつ重要な意義を、壊滅的な"核戦争"を視野に入れて切実に語っているのです。

(まつもと まさつぐ 影書房・編集者)

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第9条 【戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認】
1、日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。2 、前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。