9条連ニュース/116号 リレートークNO.4

ついに軍法会議・軍刑法必要論まで
藤井 治夫

防衛大二七期卒で、現東部方面総監部防衛課長、一等陸佐の河井繁樹氏は、最近の状況激変について、次のように述べている。(月刊『陸戦研究』〇四年七月号)「自衛隊発足以来、ともすれば存在することに意義があると自ら慰め、ほとんど国民の目に触れないところで、国家危機事態に備え組織維持に努めてきた時代とはったく違った時代になりつつある。」

この文は「自衛隊司法制度の提言」と題し、サブタイトルで「軍刑法や軍法会議に相当する制度検討の必要性」を強調した巻頭論文として掲載されている。河井一佐は防大を卒業して二十五年近くになるが、この間組織維持に努めただけでなく、三万字に及ぶ論文を執筆した。この業績は立派なものであり、平和活動家諸君も注目してほしいと思う。ただし大切なのは、論文の中味である。

河井一佐によると、「殺傷」を合法的に認められているのは、我が国では自衛官だけである。自衛官は「有事」においては、我が国を侵略すると見なされる敵については、殺傷しても有罪になるわけではなく、逆に「勲章」がもらえるかもしれないのである。この「戦闘行為」は、「正当行為」であると、河井一佐は長い解説を加えている。

自衛隊には軍刑法がなく、自衛隊法の中に罰則規定をもつだけ。警察官の国家公務員法等による行動規制と同じ。

河井論文は「自衛隊独自の刑法の必要性」について、「敵前逃亡のケース」 「命令拒否・不服従」「部隊不法指揮」「秘密漏洩」などの罪の範囲ごとに検討し、さらに全般的比較として旧陸軍刑法の八〇カ条に比べて自衛隊法の罰条は第一一八条から一二六条まで、わずか九カ条にすぎないと指摘している。だから九倍に増やせということになりかねない。

裁判長に自衛官を!?

旧陸軍刑法をお手本にして自衛隊法の罰則を増やすだけで足りるわけではない。河井一佐は「自衛官は裁判官や検察官になれない。(警務隊員だけは捜査ができる)」といい、「自衛隊においても法廷を、指揮官が招集できるようにする必要がある」と述べている。

しかし自衛隊独自の司法組織を作ったり、自衛隊員に厳しい刑法を設けるだけでは隊員の士気の低下や募集への深刻な影響などを考えると、軍事司法制度を設ける意義は見出しにくい。

危険度の高い海外派遣と憲法改悪

河井一佐は自衛隊独自の軍事司法制度の整備が求められるようになった理由の一つとして「海外に派遣された自衛官を裁く場合」を挙げている。

さらに彼は力を入れて、「各国の軍隊が軍刑法や軍法会議といった独自の司法制度により軍人等を裁くように、自衛隊活動地域の国際化と危険度の高い地域への派遣がなされるようになった今こそ、「本来の姿である自衛隊独自の刑法や司法組織の早急な整備が必要である」と主張する。

この「提言」の結びに位置しているのは「憲法改正」である。解説を加えるまでもない。

(ふじい はるお 軍事問題評論家)

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