9条連ニュース/120号 リレートークNO.8

自民党・憲法改正草案大綱における家族
植野 妙実子

現行憲法二四条は、家族生活における個人の尊厳と両性の平等を定めるものである。

一項には、結婚の自由を保障し、結婚生活は夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されるべきことが定められている。

二項には、婚姻や家族に関する法律が、個人の尊厳と両性の平等に立脚して制定されなければならないことが定められている。二項は国家に対し立法上の義務を示すものである。

二四条は長い間、家族間の事柄は個人の問題であることからも、指針を示したものにすぎないと考えられてきた。しかし、女性差別撤廃条約の署名・批准を通して二四条の意義がとらえ直されるに至った。すなわち家族生活や家族関係において個人の尊厳が損なわれ、あるいは平等原則が侵害されていると疑われる場合(たとえば夫婦間暴力や虐待)の根拠条文として脚光を浴びるようになったのである。男女の固定的・伝統的な役割分担を廃止し、男も女も社会的責任、家族的責任を果たす今日の社会に十分活用できる条文である。

二〇〇四年一一月にまとめられた自民党憲法改正草案大綱(たたき台)では、国及び地方公共団体が家族の保護をする、という形になった。他方でどのような形の家族に関する権利が認められるのか、明確ではない。しかも次のような問題が指摘できる。

第一に、たたき台においては、「基本的な権利・自由及び義務」を次の三つのカテゴリーに分ける。すなわち「基本的な権利・自由」「国民の責務」「社会目的(プログラム規定)としての権利及び責務」である。家族の保護は、「社会目的(プログラム規定)としての権利及び責務」の中に示されている。憲法上の権利をプログラム規定だとしてみるときは、国家の単なる目標を示していると解釈するときである。それ故、これまでは、立法上の指針として、個人の尊厳と両性の平等が明示されていたが、家庭の保護は掲げても、それがいかなる原則に基づく保護となるのか疑問となる。また、プログラム規定だとするなら、国家の単なる政策目標にとどまることになる。

第二に、たたき台においては、家庭の保護の項に、二つの事柄が注釈として付加されている。一つは、「家」制度を連想させるという復古的な意味合いを払拭して、さまざまな形の「家庭」があることを容認する、と書かれ、二つには、「家庭」は、社会や国家という「公共」を構成する最小の単位であって、そこで伝統や文化や人間的な慈しみの気持ちなどが伝承されていく土壌である、と書かれている。家庭の保護を言うのなら、当然多様な家庭の全てが保護の対象とならなければならない。国家にとって都合のよい家庭だけを保護することになってはならない。

その点、たたき台全体を見渡すと、平和主義の後退がみられ、国防の義務や自衛軍の存在が明記されている。現行憲法にはない、国家緊急事態も定められている。明らかに国家主義的、共同体主義的性格の憲法が想定されている。結局、家庭のあり方も、個人のためにではなく、国家のために存在することが考えられていると言えよう。

(うえの まみこ 中央大学教授)

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